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ジエチレングリコール事件

1985年に発覚した、ワイン異物混入事件です。
この事件によりオーストリアワインは、長く世界のワイン市場から閉め出されていたと言っても過言ではありません。

オーストリア、特にブルゲンラント州(Burgenland)のノイシードラ湖(Neusiedlersee)周辺は、高級な貴腐ワインやアイスワインの産地として知られています。ワイン通の方ならご存知とは思いますが、これらのワインは糖度の高いモストから作られた極甘口の白ワインです。よくデザートワインなどと呼ばれています。当然のことながら高級品で、オーストリア産なら1本(ハーフボトル)で最低でも1万円近くはするはずです。

ジエチレングリコールは不凍液等によく使われます。甘みがあり、粘度の高い無色の液体です。毒性は高くありませんが、有機化学合成物であるからには、決して人体によい影響を与えるものではありません。

1985年、極甘口のデザートワイン市場に目をつけた一部のワイン業者が、糖度の足りないワインにジエチレングリコールを混ぜて市場に出していることが発覚しました。
先にも述べましたが、ジエチレングリコールは甘く、粘度があり、ワインに混ぜると確かにアイスワインのようになるのです。色や匂いに影響を与えませんから、素人には(玄人でも)違いは分かりません。
当時は「ワイン毒物混入事件」として日本でも大いに騒がれました。そして日本の市場からオーストリアワインが消えてしまったのです。
実際には、このワインを飲んで健康被害が出たことはなかったようです。しかしオーストリアワインに対する信頼は失墜してしまいました。そして世界にも例を見ない、厳しいワイン法が施行されたのです。

この事件は大変不幸な事件です。しかし、そのおかげでオーストリアワインは厳しい法の下、世界で最も信頼できるワインになったのです。
今、若い醸造家達が積極的に他国の醸造技術を学び、オーストリアの厳しい法の下、クオリティの高いオーストリアワインを生産しています。私はこの事件を無駄にしなかった、オーストリアの醸造家達に学ぶものは多いと感じています。