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オーストリア政府観光局
オーストリア2ジャパン
オーストリーワインマーケティング協会

 

その駅に列車は来なかった

2009.11.11

でも、そんなことで落ち込んでいてはホイリゲに行けない。
その駅はヘルツォーゲンブルグ・シュタット(Herzogenburg Stadt)
よく晴れた9月の土曜日の昼前、列車が来るに相応しい時間帯だった。無人駅で、線路の向こうには高速道路が走っており、その間には雑草が茂った空き地があるだけだった。そこに実をたくさん付けた大きな栗の木が1本あり、一人の老人がその木を長い棒で突付きながら栗の実を取っていた。私の耳には、高速道路を走る車の音と、栗の木をゆさぶるカサカサという音しか聞こえてこなかった。
気温はすでに30度を越えていた。公式にはもう少し低いかもしれないが、日向の温度は真夏並みだった。ホテルを出る時に引っ掛けていたブレーカーはリックの中に納まっている。私はTシャツに半袖の木綿のシャツを羽織り、まさに夏の格好でベンチに座っていた。
その暑さと、目の前で繰り広げられている栗の実拾い、あるいは先程までいたラートハウス広場(ラートハウスプラッツ:Rathausplatz)のシュトュルム(Sturm)の屋台に群がる人達の影が全然釣合っていなかった。この暑さは夏、栗もシュトュルムも秋の風物詩だ。

シュトュルムに群がる人 修道院の手前にも栗の実が。。。

その駅に列車は来なかった。

私は駅員のいる駅ヘルツォーゲンブルグ(Herzogenburg)、つまり一つ前の駅まで歩き、列車が来ない事情を確かめる。何故かその日はバスで代替輸送をしており、何故かそのバスはヘルツォーゲンブルグ・シュタットの駅には停まらず、次のバスは1時間後らしい。しかもそのバスはトライゼマウアー(Traisemauer)までしか運行していなく、その先のことは分からないらしい。(何時ものことだが、オーストリアの駅員は自分の担当外のことは知らないし、興味もないようだ。)
それは引き返せということだ。ここからならサンクト・ペルテン(St. Plten)を経てウィーン(Wien)までは簡単に帰れる、でもトライゼマウアーまで行ってしまったら、動けなくかもしれない。ウィーンに明るいうちに帰れないかもしれない。
駅員にお礼を言って、待合室でウィーン行きの列車を探す。時刻は午後1時を過ぎている。ワインどころか、昼食も食べていない。気分も最悪だが、お腹も空いている。
そして、ポケットにミルクが入っていることを思い出した。
その日の朝、サンクト・ペルテンでもらってしまったミルクだ。
ミルクは私のお腹と心を満たしてくれた。そして私は彼女に微笑み返した。
それが遅すぎる事はない。
彼女には届かないかもしれないが、歪みかかった私の顔が笑顔に変わったのだから。