一見さんお断り ザーヘル(Zahel)
2009.10.25
「ホイリゲなんて良くないね。」
オーストリアワインとホイリゲの良さを強調していた私に向って彼女は言い放った。
「60番の路面電車で行くホイリゲでしょ?料理は美味しくないし、愛想はないし、私は二度と行きたくないね。」
ゲーテ・インスティトゥート(Goethe-Institut)、私達は同じドイツ語のクラスだった。彼女はリタイヤ組で、ドイツ語だけでなくフランス文化センターのフランス語のコースにも通っているとのことだった。もう何年もドイツ語のコースを繰り返してして、しかも初級と中級ばかり選択しているので、ある意味、授業では煙たい存在だった。毎年のように海外旅行にも行っているらしく、ウィーンにも1度行ったことがあるらしい。
語学のクラスメートは2種類に分けられる。留学などの目的があり、できるだけ早く語学を習得したい者と、趣味というより暇つぶしに通っている者である。彼女は明らかに後者だった。私は微妙だ。オーストリアから戻り、自分のドイツ語がいい加減だということを知り、欠けているものを補おうとしていたのだ。多少は前者のつもりだった。
前者達は仲がいい。というか、ドイツ語やドイツに関する情報を交換するので、いつも何人かが集まって話をしている。私は稀なオーストリアの情報を持っていたので、よく話かけられた。オーストリアのことや生活(ドイツとオーストリアは社会のシステムがよく似ているので、ある意味ドイツの情報ともなった)を話していた。たまたま、ワインの話になり、ホイリゲ(居酒屋)へと移行していった。そこに彼女が割って入った。
彼女は他人に話をさせない。いかにホイリゲがひどい処で、行く価値なんてないことをひたすら強調した。皆は目を合わせて、彼女の話を聞き流した。彼女の話よりは、私の話を聞きたかったのだ。
あれから15年余り、私はそのホイリゲを知る。彼女が貶したホイリゲだ。
60番の路面電車で行くマウワー(Mauer)地区は観光客にとってメジャーなホイリゲ街ではない。ホテルで紹介してくれるのは、ほぼ間違いなくグリンツィング(Grinzing)かハイリゲンシュタット(Heiligenstadt)のホイリゲだ。だが1軒だけ、リーシング地区にもホテルが紹介しそうなホイリゲがある。それがザーヘルだ。
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ザーヘルは、私が知る限り、唯一ホイリゲ解禁日(11月11日)に合わせて、日本へホイリゲ(新酒)を輸出してくれているワイナリーである。私も毎年欠かさず購入している。だからその直営のホイリゲ(居酒屋)へも行ってみたかった。でも何故か、そのホイリゲはGWやお盆の連休に営業していない。
時は2009年の9月、初めての秋のGWだ。サイトで調べたら、ザーヘルは営業していた。
だから、行った。
でも、予約はしなかった。
何故なら、予約していくホイリゲなんて、ホイリゲではないと思っているからだ。
ザーヘルはかなり大きなホイリゲである。席の数も多い。しかし、庭の席は予約でいっぱいだった。人の座っていない席も予約が入っている。仕方ないので、店の人に聞いたが、これが全然愛想がないのだ。話かけた私をちらりと見ると、無視した。何度も話かけて、ようやく対応してもらったが、予約がなきゃ駄目らしい。客あしらいは滅茶苦茶だ。
ということで、私はザーヘルを諦めて、他のホイリゲへ行った。そして、そこが彼女が言っていたホイリゲであることに思い当たったのだ。
彼女の意見は正解である。残念だが、確かに2度と行きたくないホイリゲだ。
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