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オーストリア政府観光局
オーストリアワインマーケティング協会

ヴュルツブルグが好きになる
洪水の思い出

2006.07.09

ヴュルツブルグ(Würzburg)はドイツのバイエルン州(Bayern)北部、フランケン地方(Franken)の中心都市の1つである。フランケン地方では西部に位置し、フランクフルト(Frankfurt am Main)まで特急で1時間弱、バイエルン州の州都ミュンヘン(München)までは特急で2時間強のところにある。ちなみにフランケン地方の東部には、2006年のワールドカップで日本戦もおこなわれた、もう1つの中心都市ニュルンベルグ(Nürnberg)がある。
私はヴュルツブルグが大好きである。ヨーロッパで住みたい街をあげるとすれば、ここはかなり上位にくる。好きな理由はいろいろある。まず言葉が楽である(一応バイエルン州なので、オーストリア訛りに近い)。比較的大きな都市なので生活に必要なものは揃うし、大都市(フランクフルト)も近い、ワインが美味しい(フランケンワインはドイツでも辛口ワインの代名詞として有名である)、食べ物も美味しい(バイエルン地方の料理は比較的オーストリアの料理に近い)、などなど理由を挙げだすときりがない。大学のある都市なので、インテリジェントな雰囲気があるのもいい。しかも街の大きさは、小さすぎず、大きすぎず、生活するのに調度よい感じだ。

ヴュルツブルグ   ヴュルツブルグ

この街はマイン川(der Main)の河畔に位置している。有名なロマンチック街道(Romantische Straße)の北の出発点で、古くから司教座がおかれていたため、レジデンツ(Residenz:司教の住まい)や街を見下ろす丘の上には司教のための城、マリエンベルグ要塞(Festung Marienberg)もあり、観光ための見所も多い。勿論フランケンワインの集積地であり、ワイナリーも街中や周辺に点在している。またこの地方独特のシュピタール(Spital)と呼ばれるワイナリーもある。シュピタールは病院のことなのだが、この街では福祉費用の一部を得るため、福祉施設である病院がワインを生産し、販売してそれを介護の費用に充てていたのだ。有名なのはユリウスシュピタール(Julisspital)、ここのワインは日本でも比較的手に入りやすい。また街中にはここの直営のレストランもある。
緑の多い街でもある。街中の公園も充実しているし、街を囲む丘の斜面は全て葡萄畑である。この辺りもワイン好きにはたまらない。
さてこの街はマイン河畔に位置すると前に書いた。フランケンワインが美味しい理由の1つに、マイン川の奇跡と呼ばれる川の流れがある。この川は地形の関係で三角形に大きく湾曲して流れている場所がある。この三角形の地帯が川からの恵みを受けやすく、葡萄がよく熟す地域なのである。ヴュルツブルグはこの三角形の中に位置している。川は三方から丘を囲み、美味しいワインを生む。しかしそれと同時にこの地形が致命的な水害も引き起こす。洪水だ。三方から水が溢れてくるのである。
丘の上の要塞は、今は博物館になっている。そこにはフランケンワインの歴史、とくにあの独特な形のボトルの変遷等が展示されている。ワイン好きにはたまらない。私は迷うことなくこの博物館を見学に行った。楽しみのワインの展示場は後回しにして、宗教関連や街の歴史の展示から見学を始めた。そして街の歴史を展示した場所で、多くの時間をかけてしまうことになった。主にこの街がどのように発展してきたかを展示しているのだが、同時にどのような水害(洪水)にあい、どのように復興してきたかも展示されていた。水没した街、船で非難する人、近年の水害の説明では写真も多かった。その水害の歴史を見学しているうちに、私はこの街に親近感を抱くようになった。ここに比べれば、ワインに関する展示なんて印象が薄くなってしまった。貴重なオリジナルの品を見ることができたが、興味は洪水に向いてしまっていた。

ヴュルツブルグ   ヴュルツブルグ

私は日本でも有数の大河の河口の街で生まれ育った。街はいわゆる河口の三角州に形成されており、当然のことながら川の流れより低い地域が存在していた。幸いにも実家は比較的高い地域に建てられていたのだが、通学していた小学校が低い地域に属していた。水は容赦なく街を襲う。大雨や台風の日は早めに帰宅させられたが、予想外の事態で、時として授業中に学校が水没することが起こった。先生に抱きかかえられたり、船で生徒は非難した。博物館の展示はその記憶を呼び覚ました。
外に出て要塞の庭からヴュルツブルグの街を見下ろす。マイン川が眼下をゆったりと流れていく。街の多きさは、私の故郷と同じぐらいだ。「好きだな。」私は直感した。私はこの街が好きなのだ。
オーストリアとドイツは日本人にとって大きな違いはないようである。でも確実に違う。正直なところ、私はドイツがあまり好きでない。とにかくドイツ人はプンクトリッヒ(pünktlich)すぎる。この言葉を訳すのは簡単なようでそうでもない。厳格というか几帳面というか、しかも他人にそれを求めるところが嫌だ。ドイツ人に言わせると、オーストリア人はいい加減で田舎者である。これも微妙なところで、日本人から見ると十分にプンクトリッヒである。でも私にはオーストリア人のプンクトリッヒさ加減が丁度いい。だからドイツ人のプンクトリッヒさが鼻につく。だけどバイエルン人は違う。大体においてオーストリア人に近い。東西ドイツが統一される時、一部ではバイエルン州が独立してオーストリアと合併するという噂が出た程だ。
とにかくドイツ嫌いの私にとっても、ヴュルツブルグは居心地のいい街なのだ。川のある街はいい。ドナウ河畔(die Donau)のウィーンにもそんな雰囲気を感じる事がある。