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オーストリア政府観光局
オーストリア2ジャパン
オーストリーワインマーケティング協会

 

誰も知らないブルゲンラント
白い教会の村

2007.10.21

その駅で降りた人は僅かに3人だった。列車は空いていた訳ではない。オーストリアの郊外線としては、意外と混んでいた。ただ、この駅で降りる人が少なかっただけだ。
駅前は広い駐車場になっているが、駅舎以外に建物は見えない。私は目的の物を目指して、地図を片手に坂道を上り始めた。
このブルゲンラント(Burgenland)の村に、私は昨年も来ている。来る事を望んだ訳ではない。ちょっとした偶然が、私をこの村まで連れて来てしまったのだ。止まってもいない。バスで通り過ぎただけだ。
そして村を見た。遠くからでも目立つ教会を見付けた。白く美しい教会だ。葡萄の深い緑の中に、その教会の白さが一際目立った。ホイリゲも見付けた。家並みの中に、たった一つの電球を見た。営業中を示す電球だ。
「ホイリゲ、見っけ!!」

なんとも美しい教会 バスの中からこの電球を見付けた

窓に噛り付いている私を乗せて、バスは次の目的地を目指す。丁度、1年前の事だ。
ブルゲンラントの強い陽の光は、日陰のない道を歩く私に容赦ない。村はノイシードラセー・ヒューゲルラント(Neusiedlersee Hgelland)の、まさに丘陵地域(ヒューゲルラント:Hgelland)の斜面に位置している。駅が麓で、村の中心部が中腹辺りになる。右手には広い葡萄畑が広がり、左手には街並みが見えてきた。だが、目的の物は見えない。
村の中心部を貫く道路を見つけて、左に折れる。家並みは密になってきたが、やはり日陰はない。そろそろ陽の光が体に応え始める。街並みは平凡だ。オーストリア的であり、ブラゲンラント的(ハンガリー風)ではない。それでも日本人にとっては、かなりメルヘンチックな部類に入る。役場の前を過ぎた時、ようやく目的の物の頭が見えた。

平凡な街並み ワインの村を示す圧搾機

少し足を速めるが、なかなか全体を見ることができない。中心部にあると思っていたが、かなり村の外れにあるようだ。家並みの間から見え隠れしているそれを目指して、私は歩いて行く。
イメージ的には村の外れに近い曲がり角で、ワイナリーの看板を見つけた。ワインの村なら何処にでもあるワイナリーであるが、この村には少ない。村のサイトで調べると、ワイナリーは3軒、ホイリゲは僅かに1軒しかなかった。それでも村の周りは葡萄畑ばかり、ワインの村には違いがない。道の向こう側にヴィノテク(Vinothek)の看板も見つけて、私のテンションは上がる。そして丘の方向を向いた時、それは目の前に美しい姿を見せていた。
白い教会。昨年に見た時より美しい気がする。その教会に向かって、道はなだらかな坂になっていた。日差しはさらに強くなり、教会はその輝きを増す。私は再び歩き始める。

ようやく目の前に姿を現した 教会から村を見る

教会の前に立ち、村を見渡す。ミュレンドルフ(Mllendorf)、この村の名だ。村の周りには葡萄畑が広がっている。この村がワインで有名でないのは、恐らく有名なワイナリーがない事が原因だろう。でも葡萄の出来の良いブレゲンラントだ。ワインが不味い訳がない。
坂を下りて、ワイナリーの前に戻る。記憶通りの場所に、そのホイリゲはあった。営業中の電球の光は、強烈なブレゲンラントの陽の光にも負けてはいない。しかしドアは閉まったままだ。横の裏門のようなところから中庭を除く。テーブルが出ている。やはり営業しているようだ。
日陰の席は予約でいっぱいだった。陽の光は私にはきつ過ぎる。仕方ないので中へ入った。日陰が気持ちいい。ワインと料理を頼んで座っていたが、店の人達の対応がぎこちない。外国人が、この1軒のホイリゲ目当てで来るなんて、ホイリゲの人達も、村の人達も予想していなかったかもしれない。
出てきた白ワインは、良く引き締まった辛口だった。ブルゲンラントらしい味だ。
後から入ってきて昼食を食べている消防士達は、暑さの為か、皆Weingespritzt(ヴァインゲスピリッツ)を飲んでいた。(ホイリゲの直ぐ前に消防署があった。しかも、この村にはレストランがない。あるのは1軒のカフェとホイリゲだけだ。)ホイリゲは村の人達でいっぱいになった。恐らくこのホイリゲは、村の人達の胃袋を満たすだけで精一杯なのだ。
誰も行かない、誰も知らないブルゲンラントの村、でもワインは一流、正真正銘のブルゲンラント産である。白く美しい教会の下、ホイリゲは地元の人達の為に扉を開いている。来るかもしれない観光客なんて当てにしないで。