ただ(無料)では戻れない
ワイナリーの迷宮
2007.09.17
犬も歩けば棒に当たるなら、人も歩けばワイナリーに当たる。非常に限定的な地域ではあるが、ランゲンロイス(Langenlois)辺りではそう言っても、誰も否定はしない。(オーストリア人にこの格言が通じればの話ではあるが。)
ランゲンロイスはオーストリアで最もワイナリーの多い街である。10分も歩けば街並みが途絶えそうな街にワイナリーが31も集中している。しかも、オーストリアワインの代名詞のように伝えられている葡萄品種、グリューナー・フェルトリーナー(Grüner Veltliner)の名産地でもあるカンプタール(Kamptal)の中心都市である。ワイナリーだけでなく、巨大なヴィノテク(Vinothek)とも言えるワイン施設、ロイジウム(Loisium)とウルシン・ハウス(Ursin Haus)もある。おまけに、数こそ多くはないが、街中にはホイリゲも点在する。町中何処に行ってもワインなのである。
ロイジウムは街を見下ろす小高い丘の上に建つ。南向きの斜面は勿論葡萄畑だ。ロイジウムの「これでもかグリューナー・フェルトリーナー攻撃」に撃沈されてしまった私は、早々に立ち去る。帰り道は畑の中の砂利道を下るだけだ。人通りは少ない。というか、まったくない。あれ程ロイジウムの中にいた観光客達は、皆バスか車でピンポイント的に乗り付けているだけなのだ。従って、街の中を散策する人は少ない。
街並みは現代的でも中世的でもない。平凡なオーストリアの地方都市だ。車道を横切り、路地に入り、路地を出て、小川を渡る。道はそれ程入り組んでいる訳ではない。私の歩き方が出鱈目なだけだ。
さて、ワイナリーが多いこの街のこと、車道を渡る前に横を見るとワイナリーがある。路地を出ると正面はワイナリー。小川の向こうの路地の行き着く先も、勿論ワイナリー。角々とは言い難いが、通りに1・2軒はワイナリーが存在する。日本のコンビニ張りの出店(?)規模である。しかも、このワイナリー達、オーストリアのよくある田舎のように、「へぇ、こんな町でも頑張っているんだ。」程度のマイナーなやつらではない。オーストリア国内のみならず、日本でも手に入ってしまうような、ネームバリュおよびマーケティング力バッチリのブランド揃いなのだ。
「ここがあの有名なXX。」「ここが旨いXX。」「ここがXX。意外と小さいぞ。」なんて感想もレベルアップである。ホイリゲ派、ワイナリー無視の私でさえ、中を覗いてはきょろきょろ。行過ぎては引き返し、看板を写真に取っては、勝ち誇りの笑顔。これが一つの通りで何度も繰り返されるのである。
これでは簡単に散策もできない。まさにワイナリーの迷宮、実に恐ろしい街である。(どうりで散策しない訳だ?!)さらに恐ろしい事に、そのワイナリーのワインが欲しくなる。記念に写真を1枚ではなく、ワインを1本である。これでは財布も無事には済まない。
オーストリアワイン通はランゲンロイスに行ってはいけない。行っても、ロイジウムとウルシン・ハウスを見て満足した方がいい。その奥深いワイナリーの迷宮に迷い込んだら、雷雨でもない限り抜け出せない。(傘を持ってて良かった!!)
