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オーストリア政府観光局
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ホイリゲ その幻想と現実

2007.11.11

私の世界には一軒のホイリゲがある。そのホイリゲは決して珍しいタイプのものではないが、共有できる人も少ないような気がする。人はそれぞれ自分のホイリゲをもっている。少ないともホイリゲに行ったことのある人、あるいはホイリゲに行こうと考えたことのある人には、自身が思うホイリゲがあるはずだ。
もう随分昔のことになるが、グリンツィング(Grinzing)を始めて訪れた時、シュランメル音楽の楽士を見てショックを受けてしまった。ホイリゲの雰囲気はさほど違和感を覚えなかったが、音楽が始まり、客が盛り上がり始めると、その盛り上がりのテンションに反比例して、私のテンションは下がっていった。
「こんなの、ホイリゲじゃない!!」
その時の正直な気持ちだ。そう叫んで、飛び出してしまいたかった。
でもガイドブックを見ると、当たり前のようにそのことが書かれている。しかもホイリゲのある地域はウィーン市内に限るらしい。ウィーン市外にホイリゲは存在しないそうだ。
ウィーン市の条例を鵜呑みにすれば、それは確かに正しいのだが、現実はそうではない。第一、ホイリゲ発祥の地はウィーンではない。よそでやっていることを、ウィーンの葡萄農家が真似ているのだから、ウィーン以外にも存在して当然である。その辺りの情報は、ガイドブックからも、オーストリアの観光サイトからも決定的に欠落している。
冬もホイリゲが営業していることを言って、酷い目にあったこともある。ホイリゲは夏しか営業していなく、「そんなこと(冬も営業していること)をウィーンで言うと笑われる。」そうだ。それも一つの幻想である。ホイリゲには庭の席のイメージが強い。ガイドブックを見ても、観光サイトを見ても、勿論このサイトでも、ホイリゲといえば夏の庭だ。でも現実は違う。冬だって営業しているし、店の中にも席はある。だが、とにかく、夏の庭の席は絵になるのだ。だいたいガイドブックなど、一部の例外を除いて、写真は常に夏だ。雪のある写真など、チロル地方のウィンター・リゾートぐらいしか見たことがない。雪のグリンツィングなんて、探しても見つからないだろう。だがしかし、ホイリゲは営業している。観光客も行く。常連さんも通う。ウィーンで笑われるとすれば、「冬にホイリゲに行く」行為かもしれない。多くの人にとって、冬はホイリゲのシーズンではない。季節外れ感は否めない。

理想的な夏の庭 それでもホイリゲは冬も営業している

短い冬の夕暮れは終わり、辺りはすっかり夜の気配だ。ホイリゲの電球を見上げると、粉雪が舞っているのが見えた。雪は音もなく降り続いている。夏場は賑わっている、今は人影のない庭を横切り、店の中へ入る。中はストーブの熱が行き届いているので、セーター一枚でも大丈夫だ。入口のコート掛けに重いコートを掛け、帽子と手袋も脱いで、身軽な格好で席に着く。冬は乾燥しているし、外が冷え込んでいるので暖房が暑く感じるせいか、冷えた白ワインが美味しい。白ワインを一口飲み、一息つく。店の中は淡い光が満ちている。冬の道はよくない。着いたばかりなのに、私は帰りの心配を始めている。