そこに確かに存在した コールマルクト(Kohlmarkt)
貴女はウィーンで何処にショッピングに行きますか?
高級ブランドを買うなら、何処がお勧めですか?
ウィーンでルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)やグッチ(Gucci)、シャネル(Chanel)、フェラガモ(Ferragamo)等のブランド店が集まるのは何処ですか?
それはコールマルクト(Kohlmarkt)、王宮(ホフブルグ:Hofburg)から東北に延びる短い通りだ。そこに行けば大抵の高級ブランドの店がある。短い通りなので移動に時間はかからない。買物好き(高級ブランド好き)の人には天国のような通りだ。
だが、嘗て、そこに確かに存在していた。
トーネット(Thonet)、オーストリアを代表するインテリアの店(会社)だ。カフェなどでよく見かける曲木の椅子はあまりにも有名だ。トーネットはコールマルクト、ヴァルネー通り(Wallnerstrasse)の始まる角、今はルイ ・ヴィトンがある場所に展示場的な店を出していた。インテリア、特に家具を眺めるのが好きな私は、ウィンドゥ・ガラスに体を密着せんばかりの体勢で店の中を物色したものだ。入ったことはない。私のような庶民が気軽に入れる店ではない。だいたいオーストリアでは店内に入るということは、ほぼ購入の表現だ。見るからに買えない私の入ることのできる場所ではない。
もともとコールマルクトは王宮の前という立地条件から、王宮御用達あるいはそれに匹敵する高級店が軒を並べていた。宝石や銀食器、インテリア、被服(テーラー)、チロル蝋燭まで、その接頭語として高級が必要となるオーストリアでも老舗中の老舗が店を出していた。買うことなどできないのに、その通りを歩くだけでドキドキしたものだ。
今、コールマルクトに軒を並べるのはフランスやイタリアの高級ブランド店である。オーストリアの老舗は1つ、また1つと姿を消し、華やかなブランド店の中にあっては、僅かに残る店の方が場違いな感じだ。勿論、そこを通ったからといって私もドキドキしない。その眺めは京都の四条通りと変わらない。店構えも似たようなものだ。店先だけの写真を見せられたら、ウィーンと京都の見分けもつかないかもしれない。ある意味で、グローバル化するということはこういうことかもしれない。
とはいえ、トーネットがそこに店を構えたのは1971年、僅か30年弱で撤退することになる。高級ブランドが軒を並べるようになって10年程、10年後はどうなるのか分からない。結局、コールマルクトとは時代を映す鏡なのかもしれない。その時代の庶民の羨望の的、手に入れたいのに手に入れにくい物の展示場なのかもしれない。