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さようなら、南駅(Sdbahnhof

2010.01.24

さようなら、南駅。語り尽せないほどの思い出をありがとう。

南駅正面 中は広い

テルメンレギオン(Thermenregion)が原点の私にとって、南駅はその入口だった。オーストリアを訪ねた時は、毎回この駅を利用していた。この駅から列車に乗り南へ向かう。それが私にとって、本当の意味での「オーストリアに帰る」ということだった。

初めてこの駅に立ったのは1989年の初夏、ウィーンに住んでいる友人をうまく騙して、その両親の家に居候させてもらうためだった。ご両親は南駅から快速で1時間足らずの小さな町に住んでいた。だから友人と2人でこの駅から列車に乗った。
初めての大陸で、初めてのヨーロッパで、国際列車が止まる駅も初めてだった。
電光掲示板に並んだ列車の行き先に心の中で声をあげた。そこにはオーストリア国内だけでなく、イタリア等のよく知っているオーストリア国外の都市の名前が掲げられていた。大きなエスカレータがあり、ホームが東行きと南行きに分かれていて、外国へ向かうらしい大きなスーツケースを持った人々で溢れていた。(私自身も大きなスーツケースを持っていた。)いろいろな国の言葉(主にイタリア語)が聞こえ、駅員の英語も流暢だった(オーストリアの国語はドイツ語)。
国際的な空気が流れていて、これからオーストリアの田舎に向かうだけの私も、急に国際人になったような気がした。

切符売り場が見える 東行きホームの列車はブルゲンラントへ向う

南駅から快速で1時間足らずの小さな町に住む者にとって、南駅はウィーンの起点だ。とにかく南駅まで行き、地下鉄か路面電車に乗り換える。ウィーンから帰る場合も同じ、とにかくなんらかの交通手段で南駅まで行き、列車に乗る。
路面電車は駅前に停留所があるので、乗換えが比較的簡単だが(でも、南駅は大きいのでホームまではかなりかかる)、地下鉄はソードティローラー・プラッツ(Sdtiroler Platz) からの乗換えとなった。違う駅と言えばそうなのだが、実はこのソードティローラー・プラッツ駅は南駅の南行きホームの1番南の部分に隣接している。地下駅なので、地上に出たら南駅の南行きホームの端っこの入口の前に出た。といっても南駅は大きい、南行きホームの端っこから駅舎までは1駅位の距離があった。しかもホームの端っこにあるとはいえ、南行きホームの全てのホームに通じている訳でもない。長いホーム3つぐらいにしか入れない。つまり短いホームに止まっている列車に乗る時は、駅舎まで行かなければならない。例えば、私が帰えろうとしている駅にも止まる快速列車なんかだ。
帰りが遅くなった時、列車(当時は1時間に1本しかなかった)に乗り遅れそうになった時、私はこのホームを全力疾走した。元陸上短距離選手だから、この辺りは得意なところだ。しかも、私以外にも大勢の人が走っていた。
やれやれ、オーストリアの列車はどの路線も運行本数が少ないのだ。

レストランやスタンドもある ホーム近くのスタンド

列車に乗り遅れた時は、南駅の中で暇を潰した。
スタンドでアイスクリームや飲み物を買って、ベンチに腰掛けて本を読んだりした。うろうろしていると、知った顔にも会った。居候先のママにもよく会った。同じ場所に帰るのだ。同じ列車に乗る可能性は高い。
南駅で過ごした時間は長い。だから、南駅の何処に何があるか、何処で何が出来るかは、トイレの場所からスタンドまでよく知っていた。

南行きホームに停まる列車 最後に立つ

最後に南駅に立ったのは2009年の初秋だった。
その年の暮で南駅が閉鎖されることを偶然知り、ある決心をしたのだ。
ある町を思い出という甘い場所で凍結し続ける訳にはいかない。だから、そこへ行く。思い出という場所から取り出し、今の私の世界に取り戻す為に、南駅から列車に乗って、その町へ行く。
だが、しかし、残念なことに、その町に向かう列車は既に南駅発ではなくなっていた。仕方ないので、南駅の南行きのホームに立ち、列車が行くべき場所を確認し、ソードティローラー・プラッツから快速に乗った。

さよなら、南駅。
私はレオベレスドルフ(Leobersdorf)を取り戻したよ。