やがて待てなくなる ウィーン市内の待ち時間表示
「もう、最低。前の列車が出たばかりで、駅で1時間も待ったのよ。」
不機嫌な私は、食卓に着くなりぼやき始めた。
「それこそオーストリア。1時間で良かったじゃない。」
私の昼食を用意しながら、ママはきっぱりと言い切って笑った。
「ようこそ、オーストリアへ。」
あれから15年以上の月日が流れてしまった。
急き勝ちで待てない日本人とは対照的な、穏やかで時間にルーズなオーストリア人。そんな世界は何処へ消えてしまったのだろうか?今やオーストリア人も、カリカリしながら次の列車を待っている。
私の個人的な見解では、昔からオーストリア人は穏やかでも、時間にルーズでもない。加えて、ゆったりと列車が待てる人の割合は、日本人並に少ない。どちらかと言うと、日本人より急き勝ちかもしれない。
列車の本数が少ないのは事実だし、それに合わせて駅へ行っているので、カリカリしながら待つ人が少なかったのは事実だ。ウィーン市内の地下鉄や路面電車の運転間隔も、日本の地下鉄に比べたら長かったような気もする。それを大人しく待っていたのは、単純にそんな世界だったからだ。来ないものに常にカリカリしていたら、カリカリしている人間の体がもたない。
5、6年前だと思う。ウィーンの地下鉄に次の列車の案内が表示されるようになったのは。日本の地下鉄と同じだ。ホームに次の列車がどこまで来ているか表示される。こうなると、それを睨み付けながら、カリカリする人を見かけるようになった。表示をいくら睨み付けても、次の列車は早く来ない。でも、そこにあると見てしまう。表示がなかなか変わらないと、悪態の1つも言いたくなる。
この夏はもっと進化していて、路面電車の各駅にも、次の電車の時刻と行き先が表示されるようになっていた。当然、カウントダウン(?!)している人もいる。来ないとカリカリしている。昔ながらの雰囲気で、ゆったりした感覚のある路面電車だが、何時来るか分からない次の電車を、心穏やかに待つ人はもういないのかもしれない。
青き美しきドナウのメロディーと共に、テレビ等に映し出されるウィーンの街。穏やかなワルツのメロディーをウィーンではますます感じられなくなっている。人々の歩く早さも変わったように感じているのは、私だけだろうか?