シュパーゲル、シュパーゲル 春を呼ぶ食べ物は何?

オーストリア人はウィンナー・シュニッツェル(Wiener Schnizel)やグラーシュ(Gulasch)ばかり食べている。でなければ、ハムとか肉を煮たり、焼いたり。付け合せはじゃがいもかサワークラフト(Sauerkrauf)。季節感のない料理ばかりだ。
と、これは偏見である。が、ある意味真実でもある。
それでもオーストリアにだって季節を感じることのできる料理がある。それを食べれば、「あぁ、春だなぁ。」としみじみ季節に浸れる料理がある。
シュパーゲル(Spargel)、アスパラガスだ。
日本では年中食べることのできるこのアスパラガス。オーストリアでは春しか食べることができない。4月の終わりから6月まで、約2ヶ月間だけなのである。これには訳がある。アスパラガスは作りすぎると土地を枯らす。優良な農地を維持する為に、政府が決めた法律があるからだ。
とにかく、難しい話は置いておいて、市場に白いあの物体が並び始めると春である。レストランの表の黒板(その日のスペシャルメニューを書いていることが多い)にも、シュパーゲルの文字が躍る。皆、この季節を心待ちにしているから、争うようにアスパラガスに舌鼓を打つ。そして、長く暗い冬を忘れ、春を舌で感じるのだ。
さて、このアスパラガス、白が主体で、日本で主流の緑のものは皆無である。しかも凄く大きい。4、5本食べればお腹いっぱいになってしまう。しかしお肉主体のオーストリア料理にあって、メインが野菜とはありがたい。あっさりしてるし、胃にもやさしい。(ソースは以外とこってり系ですが)
私はアスパラガスのスープが好きだ。クリームスープである。正直なことを言うと、アスパラガスは美味しいが食べにくい。繊維の関係で横には切れないからだ。私は1本を4等分に裂き、それを1/4位に折り畳んで食べる。ナイフとフォークでこれをやるのは、かなりの高等技術が必要だ。でも、スープは違う。アスパラガスの風味のクリームスープに細かく刻まれたアスパラガスが浮いている。スプーンで簡単に食べれらる。しかも、味もいい。実に私向けの料理なのだ。
ところで、私が定宿にしているホテルは安価でこじんまりとしているが、レストランは有名で、かなり高級である。ターフルシュピッツ(Tahelspitz:ボイルドビーフ)が売り物で、それ目当ての客も多い。長年利用しながら、レストランとは縁がなかった。私はホイリゲに行く。その為にオーストリアに行っているのだ。高級レストランなどに用はない。
ところがある時、部屋に置かれているレストランのメニューに釘付けになってしまった。大きく書かれた「アスパラガス週間」の文字。内容は前菜からメインまで、とにかく全部アスパラガス。勿論、大好きなクリームスープもある。メインは4種類、個別に頼んでもいいのだが、好きな物を3、ないしは5品チョイスすることもできるようだ。アスパラガスのフルコースである。日本にだって、竹の子づくしとか、松茸づくしとか季節を感じさせるコースメニューはあるが、オーストリアでは見たことなかった。「食べたい。」そう思ったら、ホイリゲなんてどこかに飛んでいってしまった。どんなに高級なレストランだって、私はこのホテルの客だ。利用して悪い訳がない。フロントは馴染みである。
「30分したら来るから、席予約しといてよ。」
「OK、言っとくから。」
彼はその足でレストランに予約を取りに行ってくれた。
30分後にホイリゲモードから、レストランモードにチェンジした(つまり着替えた)私は、初めてそのホテルのレストランに入った。対応はすこぶるいい。高級だからかもしれないが、日本から年に2回は泊りに来る客である。いい客の部類にはいるはずだ。
私は3品チョイスした。前菜はアスパラガスとターフルシュピッツのサラダ。アスパラガスも美味しかったが、自慢のターフルシュピッツもスライスとはいえ、やはりウィーン一との声もあるだけのことはある。スープは勿論アスパラガスのクリームスープ。上品に仕上げてある。
メインはアスパラガスと魚や肉との付け合せや、アスパラガスを揚げたものがあったが、私はプレーンな茹でたものを選んだ。美味しいものはシンプルな方がいい。ソースは味を引き立たせるが、時にだいなしにもしてしまう。選択は正解だと思う。どれも文句のつけられない味だ。でも、この時点で私のお腹はいっぱい。メインの付け合せのじゃがいもを残した程である。
価格も決して高くはなかった。もともと庶民的なバイスルのような店でも、アスパラガスの料理はかなり高価である。このままでは、5月に行く度にレストランのメニューをチェックしてしまいそうだ。
春のアスパラガス、ホイリゲでもサラダをおいている場合がある。グンポルスキルヒェン(Gumpoldskichen)のホイリゲで食べたサラダも美味しかった。こちらはマヨネーズで和えただけの、すこぶるシンプルなサラダだったが。

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