ソース(Soo)へのバスは何処?
バーデン(Baden bei Wien)の駅前はバス・ターミナルではない

バーデンの駅、バス停もここにある ソースのホイリゲ街、ワインの味は一流

バーデンはウィーン近郊ではかなり大きな町である。温泉もあるし、カジノもある。大きなホテルが軒を連ねている。観光客も多い。メインストリートは平日の昼間でも人通りが多い。駅前の広場も広く、駅舎もりっぱだ。
この付近は私のテリトリーというか、庭のようなものだ。もっと南の村に居候していたことがある。ワインの味もそこで覚えた。休日はこの辺りの町や村で遊んだ。何処で暇つぶしができて、何処のワインが美味しいかよく知っている。でも、移動は車か列車だった。
ソースホイリゲで有名な村だ。訪れたこともある。だから、またソースのワインが飲みたくなった。しかし、ソースは鉄道の沿線から少し離れている。駅から歩くには少し遠い。バスで行くしかない。
と言うわけで、オーストリア鉄道(BB)のサイトで検索すると、バーデンでバスに乗り換える時刻表が出てきた。このサイトは乗り換え場所や、所要時間が一目で分かり大変便利だが、乗ろうとしている列車やバスが何処から来て何処へ行くのかは分からない。(本当は調べられるのが、この時は気が付かなかったのだ。)ここで、私は大きな勘違いをしてしまった。そのバスはバーデン発だと思い込んでしまったのだ。その付近で大きな町はない。バーデンがターミナルになっていて、近郊の村々へのバスが出ていると思い込んでしまったのだ。
ガイドブックにはソースなんて絶対に出ていないし、バスの情報も少ない。オーストリーワインマーケティング協会(AWMB)のサイトにも問い合わせたが、ものすごく親切な(皮肉)返事しか返ってこなかった。きっと、ソースなど行ったことがないのだろう。確かに、ソースのワインはあまりボトリングされては売られていない。ホイリゲ村なのだ。日本への売り込みには関係ない。だから興味がないのだ。ワインはいいできなのに、惜しい。だいたい、オーストリアのワインの多くは、ホイリゲでホイリゲ(新酒)として消費されていて、ボトリングされて市場(特に外国)に出回るワインの量は少ない。日本に売り込もうとした場合、ボトリングされたワインを売るしかないわけだけど、ホイリゲの情報をもっと提供してもいいと思う。グリンツィング(Grinzing)だけじゃなく、グンポルスキルヒェン(Gumpoldskichen)やソースと行った、マニアックなホイリゲ村の情報だ。そういう所に行きたいと考えている人は意外に多い感じがする。人は人と違ったことがしたいものだ。そして人間、味を占めると結構怖い。ホイリゲが懐かしくて、ついついオーストリアワインに手を出してしまうかもしれない。
さて話を元に戻そう。私は勘違いしたまま、ソースに向かった。そして、バーデンの駅前で困り果ててしまった。
バーデンの駅前にはバス停が沢山ある。バス停に表示されている時刻表を見たが、どれもソースへ行くものがない。ソースから来るものはある。どうしたことか?(オーストリアのバス停の時刻表は、日本のようにそのバス停のみの発車時間を書いている訳ではない。運行されているバスの全行程の時刻表が貼られていて、そのバス停の時刻の下に赤い線が引かれている。列車の時刻表のようなものに、マーキングしているだけだ。だから、全行程が分かるが、ちょっと見難い。)
私は仕方なく、丁度やってきたバスの運転手に聞いた。
「ソースに行きたいんだけど、バス停は何処?」
「ソースなら、反対側だよ。」
ようやく私にも状況が読めてきた。ここはターミナルではない。ただのバス停の集まりなのだ。全てのバスはこの駅前を通過していくだけ。反対側にもバス停があるではないか。ターミナルはきっとウィーンではないだろうか?少なくともここではない。
私は広い道路を横切り、反対側のバス停へ向かった。確かにソースへ行くバスがある。しかし、時刻は5分過ぎていた。次は20分後、ここは待つしかない。ベンチに腰掛ける。横には、いかにもゲルマン系らしい、厳しい感じのおじいさんが座っていた。
一息つく間もなく、バスが来る。行き先は聞いたこともない地名だ。
「ソースだよ。ソースに行くんだろう?」
おじいさんに押上られてバス乗る。どうも、さっきの会話が聞こえていたようだ。
おじいさんと通路をはさんで、横に座る。
バスはバーデンの中心部を経由して、一気に葡萄畑の中に入って行く。10分も走ると右手にソースの看板(オーストリアの市や町の堺には必ずある)。そして、懐かしいソースの町が見えてくる。
「ソースだよ。」
おじいさんが再び声をかける。私はお礼を言ってバスを降りた。バス停からホイリゲ街はすぐだ。間違えるはずがない。
しかし、あのおじいさんがいなかったらどうなっていたか。オーストリアのバスに乗るのは難しい。バス停で横に座った時、ちょっと怖がった自分を反省した。

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