ルスト(Rust am See)で乗り過ごす
ノイシードラ湖(Neusiedler See)の美しい眺め
アイゼンシュタット(Eisenstadt)からバスに乗ってルストに向かった。バスはメルビッシュ(M
rbisch am See)行きだ。ルストに行くのは初めてではない。何度か行っている。でも、何時も車だった。助手席に座ってボーットしていればルストに着いた。
しかし、その日は違う。ちゃんとルストで降りなければならない。オーストリアの田舎のバスは車内放送なんてない。自分で見極めて降りなければならない。
バスは葡萄畑の中を進んで行く。アイゼンシュタットを出てから、どうしようもなく変化に乏しい葡萄畑が続く。20分も走っただろうか、ちょっとした町が見えてきた。ルストだと分かった。バスは郵便局の前に止まる。でも、ボーットしていた。
「あっ」と思ったとき、すでにバスは動き出していた。「まずい」そうは思っても後の祭り。バスはルストをあとにして、メルビッシュに向かう。降りてもいいのだが、このバスが折り返して来るのを待つだけだろう。私は覚悟を決めて、そのままバスに乗りつづけた。「仕方ないだろ、外国人なんだから。」心の中で何度も繰り返している。
やがてバスは最後の停留所も過ぎる。降りない私に運転手が気付いた。
「どうしたの?」
「ルストで降りるつもりだったのだけど、初めてだったので、降りる場所がわからなくて。ごめんなさい。」
運転手は大笑い。私は小さくなり、申し訳なさそうな振りをする。
「時間あるだろ?このバスが折り返すから、それまで待ってくれ。今度はルストで声をかけるよ。」
期待していた結果になった。追加料金も請求されない。外国人の強み、というか、こういうことは多々あるのだ。
バスはメルビッシュの先の丘の上で止まった。ちょっとした広場になっている。後ろは林でその先は恐らくハンガリーだろう。目の前にはメルビッシュの葡萄畑が広がっている。右手はノイシードラ湖だ。
ノイシードラ湖は「オーストリアの海」とも言われており、ヨーロッパ最大の平原湖でもある。流れ込む川はあるが、流れ出す川はない。ハンガリーとの国境にもなっている。そして、オーストリア有数のリゾートでもある。
広い湖だ。水平線が見える。帆を広げたヨットがゆっくりと横切っていく。ルストで見ていた葦原とは違う。地元の人が「海」という理由も分かる。この丘は最高の展望ポイントのようだ。
運転手はゆっくりと煙草を吸っている。私は湖に見とれている。ゆっくりと時間が過ぎる。
そして、私達はルストを目指す。今度は乗り過ごさないように、運転手さんの横に座って。