同じ種類の人間
ミルクを受け取ってしまった!
2009.11.01
サンクト・ペルテン(St. Pölten)の駅を降りてすぐ、歩行者専用道路を入ったところ、 オルブレヒ(Joseph M. Olbrich)設計の家を見付け、写真を撮ろうとした私の目の中にミルクのパッケージが拡大表示された。
「ミルクよ。」
彼女はきっぱりと言い放い、にっこりと笑った。
拡大表示された訳ではない。単純に近すぎたのだ。
彼女は試供品のミルクとアンケートを配っていた。いわゆる、イベント・ガールだ。
自慢じゃないが、私は街頭でこのような物は絶対に受け取らない。何時もきっぱり拒否する。
でも、受け取ってしまった。
何故なら、彼女は同じ種類の人間だったからだ。
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人を分ける方法はいろいろあると思う。人種、民族、国籍、あるいは学歴、職業、嗜好などなど。。。。
それらのある程度客観的に分けられる分類の他に、第6感というか、なんとなく感じるというか、「この人は同じ種類の人間だな。」と感じる人がいる。「何故?」と問われてもうまく答えられない。ただ、同じ種類の人間なのだ。
しかも、この「!」は自分だけが感じるものではないようだ。大抵相手も感じているようで、何かの弾みで話し込んでしまったりする。すると、ほぼ間違いなく話が合ってしまう。
これは民族や国籍は関係ないので、オーストリアで遭遇することもある。というか、私の場合は日本より多い。そして、例えば次のバスが来るまでの長い時間を話し込んでしまうのだ。
彼女もそうだった。でなければ、いくらなんでも、目の前5cmにミルクのパックを差し出したりしない。彼女には確信があったのだ。
「こいつは怒らずに受け取る。だって、同じ種類の人間だもの。」
そう思ったかどうかは定かではないが、彼女の思惑通り、私は礼まで言って受け取ってしまった。
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美しいバロックの街並みが続くサンクト・ペルテンを歩きながら、私は激しく後悔することになる。
「どうせ飲まないし、捨てるだけだし、だいたい捨てるなら受け取っちゃ駄目だよ。」
ドーム広場(ドームプラッツ:Domplatz)の市の中で、市庁舎(Rathaus)の前で、お洒落なブディックの前で。。。
だが、私はそのミルクをヘルツォーゲンブルグ(Herzogenburg)の駅の待合室で飲むことになる。受け取ってから5時間以上が経過していたが、アルミパックのミルクはまだ少し冷えていて、私の喉とお腹を潤してくれた。アンケートの「毎日飲みたい」にチェックを入れて投函したいぐらい美味しかった。そして、彼女を思い出し、彼女に感謝した。
その日の最低なトラブルにも落ち込まないで、楽しい旅の思い出に一つに変えてしまうだけの心のゆとりをくれた、その彼女の笑顔に!!




