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カンプタール・エクスプレス
美しき谷を貫くローカル列車

2007.09.30

緑深い谷間に、汽笛の音が響く。追いかけるようにレールを走る音が聞こえる。
「列車が走っているのか?」
ホイリゲの客が主人に尋ねる。
ホイリゲはハイリゲンシュタイン(Heiligenstein)の中腹にあり、谷間を見下ろすようにテラス席が配置されている。眼下を流れる川はカンプ川(Kamp)だ。大河ドナウの支流の一つではあるが、決して大きな川ではない。川というより、小川のイメージに近い。流れも緩やかである。線路はその川に沿って、ほぼ南北に伸びている。

ハイリゲンシュタイン   カンプ川

カンプ谷(カンプタール:Kamptal)は美しい谷である。カンプ川に沿ってなだらかな丘陵が連なっている。夏のとりわけこの時期に緑が深いのは、丘の麓からほぼ頂まで、葡萄畑が連なっているからである。
この地域の名産は、なんといってもグリューナー・フェルトリーナー(Grüner Veltliner)である。オーストリアを名実共に代表するそのワインのなかでも、銘品と呼ばれるものの多くがこの谷で育てられている。オーストリアワインにはまってしまった者にとって、この美しい谷は聖地と呼ぶに相応しい場所だ。特に、今、私が立つハイリゲンシュタイン、その南向きの斜面は、この谷の水準の高さを誇示している。麓で育つグリューナー・フェルトリーナーの爽やかさ、中腹で育つリースリング(Riesling)の味わい、どちらも他に類を見ない品質の高さだ。
この丘のワインに釣られてここまで来てしまった私ではあるが、このホイリゲからの景色にも魅了されてしまった。しかも、どう見ても酔っているおやじが一人店番をしている、開いているのかよく分からないホイリゲでも、この丘のワインが飲める(当たり前なのだが)。私の他にはドイツからのリタイヤ組のグループがいるだけである。おやじ(多分、主人)は、さっきから我が家のワインの自慢話を続けている。そこに汽笛の音が響いた。
「カンプタール・エクスプレス」
おやじは立ち上がって谷を見下ろす。
「カンプ川に沿って、ホルン(Horn)まで行っているんだ。沿線はワインが旨いぞ。」
理由なく誇らしげである。

ハイリゲンシュタイン   ハイリゲンシュタイン

さて、ご自慢のカンプタール・エクスプレスである。ほぼカンプ川に沿って走っている訳であるから、車窓からは美しいこの谷を見上げることになる。次々と現れる丘、連なる葡萄畑、小さな村々、息を呑むというよりは、息をする間もない美しさである。しかも、クレムス(Krems am der Donau)からホルンまで、ゴベルスブルグ(Gobelsburg)やランゲンロイス(Langenlois)などカンプタールのワイン名産地を結ぶようなに谷を貫いている。この谷の大動脈というべき路線である。でも、現実は非常に厳しい。

ゴベルスブルグ   ハイリゲンシュタイン

運行は2時間に1本、一両編成のワンマンカーである。谷間を颯爽と走り抜けてはいるものの、観光客の利用は少ない。何処も事情は同じ、観光客は有名な産地やホイリゲ街にバスや車で乗り付けているのだ。ドイツからのグループも、車でここまで来たようである。

ランゲンロイス   シェーンベルグ

カンプタール・エクスプレス、酔いどれ列車は行く。
と言いたいところだが、地元の人達に混じって、美しい景色を独り占め(地元の人は景色などに関心があるとは思えない)。葡萄畑を貫いて、谷間に響く汽笛と共に、ローカル列車は今日も走る。