ストーブを囲んで袖摺り合うも 冬のホイリゲ
店の真ん中に、昔懐かしいダルマストーブが置いてあった。オーストリアでストーブといえば、部屋の隅に置かれた造り付けの陶器製の物をよく見かけるのだが、その店は違っていた。小雪のちらつく中、息を凍らせてたどり着いた私達にとって、そのストーブは見るだけで暖かさを感じさせてくれた。
そのホイリゲは本当に簡易食堂のような造りなので、壁が薄いのかもしれない。店全体が暖かくなることはないようだ。あるいは、そこにある暖房機器だけでは温まりきれない程、寒いのかもしれない。まるで何かに引き付けられるように、皆ストーブの周りに集まることになる。小さな村なので、見知った顔ばかりなのも影響しているのだろう。気が付けば、皆ストーブの周りで話し込んでいる。他愛のない世間話だ。だがワイン片手に盛り上がっていく。袖摺り合うも何かの縁である。冬のホイリゲの細やかな営みの一つである。
夏のホイリゲ、特に庭先の席が好きな人、それがホイリゲだと思っている人には分かりにくいかもしれないが、冬には冬のホイリゲの楽しみ方がある。袖摺り合う分だけ、客同士の距離が近くなる。暖房でほてった体に冷えたワインもまた格別だ。雪のちらつく道から、幽かに見える営業中のランプの光もいい。暗い雪道に聞こえてくる、客達の話し声も温かみを帯びている。
冬のホイリゲ、はまると結構抜け出せない。