父と娘のワイン おじいさんのお酒
2006.08.27
私のホイリゲ好きには訳がある。勿論、オーストリアのワインが好きなことが最大の理由ではあるけれど、それならわざわざホイリゲに行かなくてもいい。ホイリゲは私のルーツと大きく関わっている。葡萄農家がワインを作る。この事実が大変重要なのだ。
ところで私は異常なくらい酒が強い。(もう気が付いていますよね。)ワインなら2ボトルは軽い。3ボトル飲んでも、翌日の朝食が進まないぐらいで2日酔いにはならない。夜に弱いことと(沢山飲むには時間が必要なのだ)、お腹がいっぱいになるので、普段は1ボトル、ホイリゲなら1/4(250ml)を2杯と決めているだけである。
父も酒が強い。日本酒が好きだ。それで飲みすぎて糖尿病になりかけたぐらいだ。勿論、おじいさんも酒が強かったらしい。日本酒が大好きだった。そして彼は飲みすぎて身上をつぶした。筋金入りの大酒飲みだったのだ。
おじいさんの家は20代近く続いた造り酒屋だった。広大な水田を持ち、そこで取れた米で酒を作っていた。今は人手に渡った、おじいさんの家(父が生まれた家)の跡に行ったことがある。減反政策で薄が繁る水田跡を見下ろす、南向けの斜面に造られたその場所は、オーストリアの葡萄畑と重なる。米を育て、酒を作る。ホイリゲと同じだ。
父は今、糖尿病を警戒して酒の量を制限している。したがって、おじいさんのように身上をつぶすことはない。
ある夏の夕暮れ、父と2人だけの食卓、カンプタール(Kamptal)産のグリュナー・フェルトリーナー(Gr
ner Veltliner)を開ける。肴は平目の刺身と野菜の和え物、純粋な日本料理だ。カンプタール産のグリュナー・フェルトリーナーには、このような料理がいい。グラスにワインを注ぐ。父が1口飲む。
「旨いな。」
お酒の味が分かる人には、ワインの味も分かる。うんちくなど関係ない。旨いものは旨い。
気が付くと、父のグラスが半分位になっている。
「もう少し、飲めるかな?」
「あと、1杯はいいよ。」
父の為に、私は小さめのグラスを用意した。多分、1杯では物足りないと思ったからだ。
夕暮れが静かに、部屋にも流れ込んで来る。
「旨い、ワインだ。」
父は2杯目に口を付けている。
それまで父は殆どワインを飲まなかった。でも私の家を訪ねたこの夏を境に、時々ワインを飲むようになった。ボージョレー・ヌーボーなんかも購入しているようだ。
おじいさんが酒蔵をつぶさなかったら、父も私も、日本酒を作っていたかもしれない。ホイリゲのように。だから私はホイリゲが大好きだ。特に農夫くさいおやじがやっている店がいい。
父は今でも時々言う。
「あのワインが1番旨かったな。」
勿論、カンプタール産のグリュナー・フェルトリーナーのことだ。
- 父は現在、糖尿病より重い病と戦っています。食べ物には制限ないので、できるだけ長く美味しい物を食べ、美味しいお酒が飲めることを願っています。
- Kino_Sanはその後、自己免疫性肝炎を発症してしまいました。医師からはアルコールを禁止されています。ただし、ゆ~るく生きているKino_Sanは、自分で管理しながらアルコールを楽しんでいます。とは言え、以前のように飲めるとこはなく、1日250ml以下と決めています。


