大きい=美味しいとはいかない ウィンナー・シュニッツェル(Wiener Schnizel)

グルメという点でオーストリアに注目している人は、オーストリアワインに注目している人よりは多いかもしれないが、それが目的で彼の地を訪れる人は少ないだろう。
正直、オーストリアの食事は不味くない。日本ではドイツとオーストリアの区別が明確でない人が多いようだが、ドイツ(特に北部)の料理と比べるのは失礼である。問題にならないぐらい、オーストリアの料理の方が美味しいからだ。
オーストリア料理はウィーン料理とも言うそうだが、どちらが適切か、私には分からない。だが、とにかく、旧パプスブルグ帝国時代の領土の料理をうまくアレンジして、オーストリア人の口に合うように仕上げている。支配者の強みというか、いいところ取りである。
さて、数あるオーストリアの料理の中で、最も有名なのがウィンナー・シュニッツェルである。日本的に言えば、ウィーン風カツレツである。薄いトンカツと考えればいい。
起源はミラノにある。旧パプスブルグ帝国の領土だ。当時繁栄を極めていたミラノの貴族達は、ステーキの上に金箔を散らして食べていたようである。当然、庶民には高嶺の花、とても口にできるものではない。そこで考え出されたのがカツレツである。黄金色にこんがり揚げたカツレツはまさに金箔色、貴族気分で味わうことができた。
ウィーンに伝わっても、形は大きく変わっていない。ただし、シュニッツェルとはドイツ語で薄く切った物という意味があるので、ミラノ風よりも薄い感じがする。作り方もいたって簡単だ。肉を肉たたきで薄くたたき広げて、カツレツにすればいい。かけるのはレモン汁だけなので、ソースをたっぷりかける日本のトンカツより、案外あっさりしている。使用する肉は子牛でなければいけないと勘違いしている人がいるようだが、豚肉でもよい。ウィーンでも豚肉のウィンナー・シュニッツェルを出している店は多い。
ということで、この肉を薄くたたき広げるという作り方が災いしてか、「ウィーンで1番大きなウィンナー・シュニッツェル」を看板にした店が結構存在している。盛り付けた皿よりウィンナー・シュニッツェルのほうが大きいのだ。だけど、大きい=美味しいというわけにはいかない。正直、食べてる途中であきてしまうし、冷めたウィンナー・シュニッツェルなんて美味しくない。日本にも大きさを売り物にしたレストランはよくあるけど、ものにはほどほどの大きさというものがあるような気がする。

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