正しいパンの食べ方? セムメル(Semmel)
財前直見が好きである。シリアスは駄目だ。お茶目なのがいい。だから、「スチュワーデス刑事」は大のお気に入りだった。財前のお茶目だけど切れる推理も良かったし、相手役の村田雄浩との組合せ、大食いシスターズ(水野真紀と木村佳乃)のチームワークも良かった。毎年、新春の放送を楽しみにしていた。終わってしまったのが、本当に残念である。
このシリーズの第3話は南ドイツを舞台にしていた。つまりバイエルン(Bayern)である。推理の決め手は、挨拶とパンの食べ方。アメリカで育った人とドイツで育った人では、どこが違うのか?それが挨拶とパンの食べ方に出てしまうそうである。
挨拶とは何か?些細な「こんにちは」である。ドイツ語を習う場合、「こんにちは」として教えられるのはグーテン・ターグ(Guten Tag)である。しかしながら、バイエルンとオーストリアではグリュース・ゴット(Gr![]()
Gott)がよく使われる。この挨拶の言葉で、長くバイエルンに暮らしているか、アメリカでドイツ語を習得したのかが分かるそうだ。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。バイエルンやオーストリアに長く住んでいても、あるいは生まれ育っても、グリュース・ゴットを使わない人はいる。この言葉は厳密に言うと、単なる挨拶の言葉ではない。テレビ的推理には使えるかもしれないが、現実はもう少し宗教的である。
さて、私が結構納得したのはパンの食べ方である。ただしアメリカとドイツというよりは、日本とヨーロッパとの比較と言った方がいい。つまり、パンが主食ではない国と、パンが主食の国の違いだ。
ドイツやオーストリアのパンは固い。石のように固い訳ではないが、日本人がよくやるように、少しずつ手でちぎるには硬すぎるのである。従って、慣れている人はちぎらない。どうするのかと言うと、ナイフで上下にスライスしまうのである。で、切り口にバターやジャムを塗り、そのまま食べたり、ハムやチーズを挟んで食べたりするのである。見ていると面倒な感じがするが、慣れるとスライスしてしまう方が楽である。特にバイエルンやオーストリアで朝食に食べるセムメルという丸いパンは、この方法でハムやチーズを挟むと美味しい。とっても便利だから、薄く切られて出てくる物以外は、パンはこの方法で食べるのが簡単である。オーストリア航空で出てくる、小さなセムメルさえも付け合せのサラダを挟んで、これで食べるといい。(本当にいいので、ぜひ試してみてください。)
という訳で、パンをちぎって食べていた女性は、ドイツに住んでいる人ではない。これが推理だった。こちらは、切っちゃう食べ方を知っている私は納得したが、この食べ方を住んでいるだけで覚えられる訳ではない。人は意外と自分の流儀を貫くものである。
今回のオーストリア滞在では、ホテルで面白い人に会った。若林正人さん、ニュース・ステーションの元キャスターの一人である。私的考えでは、このような有名人は、ウィーンではインペリアル(Imperial)やグランド・ホテル(Grand Hotel Wien)、サッハー(Sacher)に泊まるものだと思っていたので、少し以外な感じがしていた。何時も朝食の時間が同じになり、朝食室で会った。会ったといっても、あちらはいろいろな方と会話されていたので、私は口も聞いてはいない。ただ、私の席(長く同じホテルに泊まると、自分の席を作ってしまうものです。)の隣に座っていたので、なにげなく観察していただけだ。ニュース・ステーションの時(かなり昔だ)の記憶だからいい加減かもしれないが、彼は銀行員時代にヨーロッパ、特にウィーンに長く住んでいたはずである。だから高級なホテルより、穴場的なこのホテルを選んだのかもしれない。
そこで私が観察していたのはパンの食べ方だ。「このホテルのパンは美味しいね。」と大きな声で言いながら、少しずつちぎってジャムを塗って食べていた。もの凄く変なのである。最初は若林さんであることにも気付かず、極端に日本人的な食べ方をする人がいると思って、観察していたぐらいである。オーストリアなんかだと、以外とパンをちぎる人はいない。皆無の場所で派手にやるから、嫌でも目に入ってしまったのである。多分、それが彼の流儀だと思う。
私がこの方法を覚えたのは、長く住んでいたからではない。それは滞在2日目、つまり到着の翌朝である。いきなり朝食にセムメルとハムを出されて、寝ぼけて(実に長いフライトだった)座っていると、目の前で真っ二つにスライスされてしまったのだ。これぞセムメルの食べ方と納得した訳ではなかったが、以後は郷に入れば郷に従えの気持ちで実行していた。慣れればこの食べ方は便利なので、大抵のパンはスライスしてしまった。日本に帰ってからも、あんパンだってスライスした。(嘘です。)
若林さんの方が私よりはウィーン滞在は長いはずなので、これは長さではないと思う。長さではないけれど、オーストリアの食事用のパンはスライスした方が食べやすいので、他人にも勧めている。
セムメルはスライスして、切り口にバターを塗り、ハムとチーズをたっぷりはさんで食べるべきである。ちぎるよりは、はるかにこのパンの美味しさを知ることができる。