デートでバミューダ・トライアングル初体験

もう若くないので、今、ウィーンで若者の最先端のスポットがどの辺りか、私は知らない。興味もない。私が若かった頃は、バミューダ・トライアングル(バミューダドライエッケ:Bermudadraeiecke)と呼ばれる所があって、若者が集まるなら絶対そこだった。
バミューダ・トライアングルとはルプレヒト教会(Ruprechtskirche)の辺りで、最先端のカフェ・バー、ローター・エンゲル(Roter Engel)とクラー・クラー(Kreh-Krah)、カクトゥス(Kaktus)を結ぶ三角形の地域を指す。若者が酔いつぶれて朝まで帰ってこないことから、この名前が付いた。つまり、夜に闇の中へ姿を消してしまう訳だ。
まぁ、物騒な地域ではない。夜も遅くなると、酔った者同士、いろいろあるだろうが、基本的には若者向けのお洒落なカフェ(勿論、アルコール主体の)が集まっているだけだ。

蔦のからまる古い教会の背後にそのような所があるとは。。。 昼間は比較的落ち着いた雰囲気である

その当時は私も若かったので、デートするならここと決めている店があった。今もある、マ・ピトム(Ma Pitom)だ。折角、彼ができたので、二人で出かけることにした。できるだけお洒落して、あこがれのスポットに溶け込もうとした。場所はホイリゲではない。スマートでシックで流行にのっていないと。
その頃の私は黒髪をストレートに腰まで伸ばしていた。黒い髪はゲルマン系の人達のあこがれでもある。黒く染めている人もある程だ。美人の条件は黒髪か金髪。黒髪美人の典型は白雪姫。黒髪に青い目、赤い唇、そして雪のように白い肌。
その日は白っぽいワインピースをきて、その黒髪を垂らしているのである。ここでなくても十分目立つ。彼がいけていたかは言及しないが、私は結構いい感じだった。
蝋燭の明かりに照らされながら、上品にワインを飲み(ホイリゲじゃないんだから)、小さな声で会話をする。料理も上品だ(ホイリゲとは違う)。さすがの私もワインのガブ飲みは控えて、ゆっくりと会話に集中する。私達の英語と独語を交えた会話は、ウィーンの人達にはインテリジェントに聞こえるらしい。かの国でも外国語が話せるのは高学歴の証拠だ。実際は、知っている単語の範囲が微妙にずれているので、英語だけ、独語だけだと苦しいのだ。「今の言葉、英語だとどういうの?」「その英語、独語で話せない?」これが本音である。
「デートは、やっぱ、こうだよね。」私なりに満足している。
夜が更けて、店はさらに込んで来る。カウンター席に収まりきれず、立ち飲みしている人もいるぐらいだ。夜に弱い私のことを、それなりに理解してくれている彼は、ゆっくりと席を立つ。
店の外も若者でいっぱい。昼間のこの地域を知っている私には驚きである。ウィーンの人は夜更かしは平気である。8時や9時から始まるパーティだってある。私には帰る時間だ。この辺りが本格的に賑わい出すのが10時ぐらいから、私達はその序盤で帰り始める。残念だが私が寝てしまう。
帰りは少しだけ遠回りする。酔いを覚ますためでもある。ケルントナー通り(Krntner Strae)を歩く。あちこちでストリート・ミュージシャンが演奏している。時々立ち止まり、聞き入り、時々無視する。夜のウィーンも悪くない。もう少し音楽を聴いていたい気もするが、私達はカールスプラッツ(Kalsplatz)より地下鉄に乗る。

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