間接照明の本当の訳 集合住宅の智恵
ヨーロッパの人は間接照明が好きだ。近頃では日本でも間接照明が見直されて、自分なりに楽しんでいる人がいるようである。単に明るいだけの照明と違って、間接照明は心和ませる。ムードもあるし、今流行りの癒し系でもある。
さて、ウィーンのアパートでも夜にメインの明かりを点けるのは、本を読んだり、勉強したりする極限られた場合のみで、何時もは部屋の隅のランプ等しか点けていなかった。それには訳がある。確かに落ち着くし、好きだったのも事実だけど、それだけではない切実な問題があったからだ。
ウィーンは都会である。市街地は殆ど例外なく集合住宅だ。中庭を取り囲むようにいくつかのアパートが高さまで揃えて、まるで1つの建物のように連なっている。訪れたことのある人なら分かると思うが、あの町並みは美しい。通り、いや街全体が、なんらかの都市計画によって創られたような感じさえする。
さてこの町並みが、実は間接照明を必要としている。というか間接照明でなければ暮らせない。どういうことか。
高さまで揃えたアパートが、中庭あるいは道路を隔てて建てられているのである。昼間はいい。別に感じない。でも夜が来ると分かる。道路の向かい側、あるいは中庭に面したある部屋が照明を明々と点けているとどうなるか。部屋の中が丸見えなのだ。覗く気はないのだけど、薄暗い窓が多い中に、明々と照明を点けている窓があると、どうしても目がいってしまう。中に居る人の動きまで見えてしまう。私の部屋は大きな中庭に面していた。中庭を囲むようにいくつもの窓が並んでいた。だから私も近所の部屋の様子を見て、何時の間にか照明を点けなくなった。
間接照明は好きだ。日本に居る今も楽しんでいる。でもウィーンでは死活問題だ。
街中のプチホテルに泊る機会があったなら、夜には外を眺めてほしい。きっと照明を落としたくなる筈だ。