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オーストリア政府観光局
オーストリアワインマーケティング協会

アルプスの終わる場所

2010.02.07

アルプス(Alpen)はグンポルスキルヒェン(Gumpoldskirchen)の西側の丘の上で終わる。ドナウ河(die Donau)に行く手を阻まれ、それでもなんとか東に広がろうとしていた山々の裾野は、ハンガリー(Ungarn)に辿り着く事なくそこで終わり、パンノニア平原(Pannonia)に埋もれてしまう。ノイシードラ湖(Neusidler See)にさえ辿り着けない。
その丘の東側には、アルプスは一片も残こされてはいない。異常に暑く乾燥した夏と、非常に特殊な葡萄栽培地域が広がっているだけだ。

グンポルスキルヒェン   グンポルスキルヒェン

そこには葡萄栽培農家が存在する。小規模経営で、自分達の畑で収穫した葡萄だけを使ってワインを造っている。ワイナリーとは呼べない。ボトリングして販売などしない。大規模なワイナリーやワイン・メーカーに売る訳でもない。
その葡萄栽培農家には簡易食堂のようなものが併設されている。食堂と言っても料理人はいない。料理をするスペースも小さい。あるいは家族の台所と兼用の場合もある。料理はおまけだ。自分達が造ったワインを客に飲ませているのだ。頼まれれば瓶に詰めて販売することもあるが、基本はその食堂で飲ませるだけだ。
そんな葡萄栽培農家が多く存在する。いっぱいとか、たくさんとかの形容詞を付けてもいいぐらい無数に存在する。京都の町のコンビニなんかより遥かに多い。最悪の場合(最良の場合)、村全体が葡萄栽培農家ということもありうる。
800年以上も前から、その地域で造られたワインは、そんな風にその地域の中だけで飲まれてきた。ワイナリーも育たず、他の地域に知られることもなく。。。
テルメンレギオン(Thermenregion)、その葡萄栽培地域の名だ。

グンポルスキルヒェン   グンポルスキルヒェン

わが家の簡易食堂で飲ませるのが目的だし、だいたい造ったワインがそれ程多いわけではない。ワインを寝かせるなんて考えもない。だから次の年のワインが出来上がるまでの量があればいい訳だし、造りたてを飲むのだから、できれば寝かせて美味しくなるより造りたてが美味しい方がいい。大規模に葡萄を栽培している訳ではないので、手間のかかる品種でも、美味しければ構わない。だから他の葡萄栽培地域では見捨てられた品種の栽培が続けられてき。Rotgipfler(ロートギプフラー)Zierfandler(ツィアファンドラー)だ。理由は一つしかない、美味しいからだ。
今でこそワイナリーと呼べる農家が現れ、ウィーン市内のワイン販売店でも、この地域のワインを手に入れることもできるようになったが(数や種類は格段に少ないことを気にしなければの話だが)、ワイン造りに対する基本理念は変わっていない。

わが家で造り、わが家で飲ませる。

それこそが、ホイリゲだ。

グンポルスキルヒェン   グンポルスキルヒェン

シュヴェヒャート(Schwechat)の空港を離陸した飛行機は上昇を続けている。眼下には少し異様な景色が広がっている。西から波のように押し寄せてくるのはアルプスの残骸の山々だ。それを、まるで大きな波を防ぐ防波堤のように、一つの丘が押し止めている。その丘の東側には遥か彼方、地平線まで平原が広がっている。その丘とほぼ平行に1本の線路が南へと延びている。線路の周りには緑の耕作地が広がっている。
丘の中腹には小さなお城のような建物があり、そこから線路に向かって1本の道が延びている。その道の両脇には家々が密集し、小さな集落を形作っている。こそが、グンポルスキルヒェンだ。

グンポルスキルヒェン   グンポルスキルヒェン

私はその駅から列車に乗る。
目指すはもう少し南の小さな町。ロートギプフラーは草の香りを増し、ツィアファンドラーはペパーミントというより薄荷の味がする町だ。