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アルマお婆さんと午後の長居客

2012.04.11

昼下がりのウィーナー・ノイシュタット(Wiener Neustadt)の駅は子供が走り回っていた。別に運動会ではない。家に帰るだけだ。
私がそこから乗ったのは1両だけのローカル線で、車内は完全に子供達に占拠されていた。約20分間は捕虜として耐えるしかない。
列車は葡萄畑の中を走り、停車した駅で子供達を降ろしていく。それ程子供の数が減ったと思わないのは、乗車している子供の数が多過ぎるからだ。
やがて列車は一つの駅というより、線路の途中で停車する。タッテンドルフ(Tattenndorf)だ。私は開放の身となり、線路を歩いて町に入る。
タッテンドルフに来る列車は平日の昼間でも2時間に1本程度しかない。土日は皆無で早朝や夜もない。それは通勤ではなく、あの列車を占拠していた子供達の通学の足となっている。それが事実である以上、彼らの占拠はある意味正統なもので、こちらに迷惑と言えるだけの権利や根拠はない。
さて、金曜日の午後、町は閑散としている。いや、閑散ではない。それでは人が歩いているように聞こえる。正しくは、金曜日の午後、町を歩いている人は見かけない、だ。
ホイリゲ街が賑わうのは夕方を過ぎてからだろう。

アルマお婆さんと午後の長居客   アルマお婆さんと午後の長居客

私は一通り町の様子を見て、役場前のバス停で次の時間を確認する。30分程ある。次の逆方向の列車は2時間後である。
30分なら1杯ワインが飲める。
私はバス停に近いホイリゲに入る。
「やってる?」
「私は客だけど、営業はしてるよ。」
一番ドアに近い席に一人で座っていた女性客が応える。他に人影はない。
私はその斜め前の席に腰掛けた。
そして、アルマお婆さんがやって来た。
「何飲む?」
「赤ワインを1/8L。」
サンクト・ラウレント(Sankt Laurent)にしときなよ。」
思うに、このような田舎の、このようなホイリゲでの会話はこんな風には進まない。
アルマお婆さん程高齢でなくても、多くのオーストリア人はドイツ語しか話せない。そして、多くの外国人はドイツ語が話せない。従って、多くの場合、店の人は遠慮がちに、時として緊張して外国人の客に話かけるのが通常である。
が、アルマお婆さんは違っていた。私を外国人だとは思っていたようだが、遠慮も緊張もなく(まぁ、自分の店だしね)、普通に話かけた。相手がドイツ語が出来ないというのは論外なのかもしれない。(ドイツ語出来ない者立入禁止の貼紙はなかったが。。。)
やがて、ワインが私の前に運ばれ、アルマお婆さんは先程の客の席に腰掛けてこちらを見る。
「何処から来たの?」
「日本」
「そりゃあ、大変だ。電灯は点いているかい?」
私が外国人である事は、かなりはっきり分かっていたようだ。
暫く、違う席で会話していたが、アルマお婆さんが無理やり私を自分達の席に連れて行った。
この時点でバスを諦める。次は2時間後の列車だ。

アルマお婆さんと午後の長居客   アルマお婆さんと午後の長居客

やがて、先客が帰り、新しい客が来る。但し、新しい客は喫煙席を選んだので、室内の客は私一人のままだ。オーストリアでは禁煙席と喫煙席を分けなければならない。このホイリゲでは室内は禁煙席、隣のガレージのような場所(夏場は開放されて庭に席になりそう)が喫煙席なのだ。
アルマお婆さんは時々喫煙席にも行くが、基本は私の横で私と話を続ける。
何故、タッテンドルフに来たか?
どの葡萄品種が好きか?
オーストリアの他の産地は行ったか?
ワインの話は続く。。。
アルマお婆さんは私から帰りの列車の時間を聞き出しているので平気だ。それまで開放する気持ちは全然ない。途中で息子さん、つまりホイリゲとワイナリーのご主人もやって来たが、お前は喫煙席を見てろ、ばりのアルマお婆さんの指示で、あえなく撤退して行った。
さて、列車の時刻が来て、私は2本のワインを手に入れ、4杯もワインを飲んでいた。1杯は1/8Lなので500ml程飲んだことになるが、実際はもっと多い。アルマお婆さんが1/8Lの印より(オーストリアではワインは計り売りなので、ホイリゲでワインを出すグラスには印が入っている)はるかに上までワインを入れていたからだ。しかもお金は12ユーロに充たない。どこまでがサービスかも不明だ。
「列車の時間だ。」
というと、和かに送り出してくれた。

アルマお婆さんはワインが、ワインを造る事が好きで、ワイン造りやホイリゲに誇りを持っていると思う。そんな自分のホイリゲに、近所に住んだ事で(私はこの町から5kmぐらいのレオベレスドルフ(Leobersdorf)に住んだ事があり、この付近はホイリゲが多く普通の家の夕食はホイリゲなのだ)オーストリアワインが好きになり、オーストリア中のワイン産地を歩き回っている女が一人でやって来た。
それが心から嬉しかったんだと思う。
そんなアルマお婆さんとワインの話が出来て、私も心から嬉しかった。
ただ、ウィーンまでは列車の乗換えが2回ある。居眠りしないで、正気なままで、正確に乗換えるのは、かなりキツイ作業だった。